普通鋳鉄と高級鋳鉄はどう違うのですか?
Q2-4
- 普通鋳鉄と高級鋳鉄はどう違うのですか?
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日本の水道に初めて鋳鉄管が使用されたのは明治18年(1885年:横浜市)でしたが、当時鋳鉄管は日本国内で生産されておらず、イギリスから輸入されたものでした。その後、国内でも独自の鋳鉄管技術やノウハウを蓄積し、明治40年代に入るとほぼ全てを国産品でまかなえるようになりました。それ以降になると鋳鉄の高強度化の研究が進められ、昭和5年(1930年)に引張強さ25kgf/mm2を越える材質の鋳鉄管が登場しました(当時の上水協議会(日本水道協会の前身)規格は12.5kgf/mm2)。この鋳鉄管は「高級鋳鉄管」と名付けられ、従来の鋳鉄管を高級鋳鉄管と明確に区別するために「普通鋳鉄管」と称するようになりました。「普通鋳鉄」「高級鋳鉄」は水道用語であり、学術上は、同じねずみ鋳鉄(片状黒鉛鋳鉄)に分類されます。
普通鋳鉄管と高級鋳鉄管の違いを明確に言えば、顕微鏡組織の基地組織と黒鉛形状の違いにあります。普通鋳鉄管の基地組織はフェライト組織(白い部分)で、黒鉛の形(片状の黒い部分)が大きく長いのに対し、高級鋳鉄管の基地組織はパーライト組織(灰色の部分)で、黒鉛の形は小さく短い。パーライトはフェライトよりも強く、高級鋳鉄管は普通鋳鉄管より高強度が得られます(黒鉛にはほとんど強度がない)。
このような高級鋳鉄管を造るには、溶解材料に不純物の少ない厳選した鋼片を加えるのですが、安定した品質や高い生産性が得られたのは、鋼片の量の加減、それを溶解するための昇温技術、型への鋳込み温度を上げて湯流れをよくする手段、炉や鋳物砂の耐火度の改善など一連の緻密な研究を地道に積み重ねた結果でした。
普通鋳鉄管の組織(100倍)高級鋳鉄管の組織(100倍)