ステンレス製のボルト・ナットを使用した場合、異種金属の接触によるダクタイル鉄管の腐食の心配はないですか?
Q13-9
- ステンレス製のボルト・ナットを使用した場合、異種金属の接触によるダクタイル鉄管の腐食の心配はないですか?
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ステンレス製ボルトナットの表面積に比べてダクタイル鉄管の表面積は大きいため、異種金属接触腐食は問題のないレベルです。
(1)異種金属接触腐食について
二つの異なる金属が土壌中や水中などの電解質中で電気的に接すると両者の電位の違いにより、電位の低い方の金属の腐食が促進されます。この現象を異種金属接触腐食といいます。
この腐食に影響する因子は、両金属の表面積比や電位差、電解質の電気伝導度、温度、pHなどがありますが、金属側の因子で影響の大きいものは、両金属の表面積比です。(2)金属の表面積の影響
一般に、電位の異なる二つの金属を電気的に接触させた場合、電位が低い方の金属の腐食量Pは、電位の低い金属の表面積Aa、電位の高い金属の表面積Ac、電位の低い金属単独時(より電位の高い金属を接触させない場合)の腐食量Poを用いて式(1)で表されます。
ここで、P:腐食深さ、Po:金属片単独時(より電位の高い金属を接触させない時)の腐食深さ
Aa:電位の低い金属の表面積、Ac:電位の高い金属の表面積
注)H.H.ユーリック:腐食反応とその制御(第3版),P105(産業図書,1989)ここで、鉄片(Aa)とステンレス片(Ac)の表面積を以下のように変えて式(1)に代入し、表面積の違いによる異種金属接触腐食量を計算すると、下図のようになります。(3)ダクタイル鉄管本体への影響について
ステンレス製ボルト・ナットを使用した場合、ステンレス製ボルト・ナットの表面積に比べてダクタイル鉄管の表面積は大きいため、それらの表面積比は図の(2)に近いと考えられます。図の(2)に示すように100分の1の表面積をもつステンレス片を電気的に接触させた場合、鉄片の腐食量は、ステンレス片を接触させない鉄片単独時とほぼ同じ(1.01倍)です。したがって、ダクタイル鉄管に表面積の小さいステンレス製ボルト・ナットが接触した場合、ダクタイル鉄管の腐食はそれを接触させない場合とほぼ同等であることから、ダクタイル鉄管の腐食に及ぼすステンレス製ボルト・ナットの影響は少ないものを考えられます。